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徒然 梅田望夫 〜 ウェブ時代をゆく

梅田望夫 〜 ウェブ時代をゆく

『ウェブ進化論』と同様、ネット世界の現状が分かりやすい譬えで表現されています。

 今まで様々なデータを個人のPCの中に保存していたのを、ウェブ上、すなわち「あちら側の世界」に保存・公開して「知」の共有が可能となったのは、google が「検索」という手段で、あたかも神のようにその情報を司るようになったからです。

「あちら側の世界」に蓄えられた情報は「もうひとつの地球」と表現される膨大なものとなりましたが、google の進化は止まる事を知らず、一度その世界に足を踏み込めば、私達は大抵の事を知ることが出来ます。しかも、時間的にも金銭的にも、現実世界とは比較にならない効率なのです。この本の表現を借りて譬えるなら、流しそうめんで、麺が流れてくるのを待って確保するのではなく、いつでも目の前にそうめんが流れているのだから、気持ちさえあれば好きな時に好きなだけそうめんを食べることが出来るようなものです。

 本書では、羽生善治棋士の提示した「学習の高速道路と大渋滞」の概念を出発点として論旨が展開されてゆきます。
いったん言語化された知がネットを介して容易に共有されるこれからの時代は、ある分野を極めたいという意思さえ持てば、あたかも高速道路を疾走するかのようなスピードで、効率よく過去の叡智を吸収できる。そんな「学習の高速道路」があらゆる分野に敷かれようとしている。「学習の高速道路」自体はたとえば、リタイア後の生活に経済的不安がない団塊の世代の方々が大好きな趣味や専門を楽しみながら極めていきたいと考える場合など、すばらしいことこのうえない。
 しかし「学習の高速道路」も高速道路を走りきったなと思ったあたり(「その道のプロ」寸前)で大渋滞が起こるのだと羽生は言う。同質の勉強の仕方でたどりつけるのはそこまで。誰にも機会が開かれるゆえ参入者も増え、しかも後の世代も次々に疾走してきては「その道のプロ」寸前で大渋滞にはまる。「その道のプロ」として飯を食い続けていけるかどうかは、大渋滞に差し掛かったあとにどう生きるかの創造性にかかる。これが羽生の問題提起であった。

(中略)

 大渋滞の先でサバイバルするには、大渋滞を抜けようと「高く険しい道」を目指すか、大渋滞に差し掛かったところで高速道路を降りて道標のない「けものみち」を歩いてゆくか、その二つの選択肢があると私は思う。そのどちらの道を目指すにせよ、自らの「向き不向き」と向き合い、自らの志向性を強く意識し(それが戦略性そのもの)、「好きを貫く」ことこそが競争力を生むと私は考える。
 本書を読んで感動したのは、この「好きを貫く」というところです。「できること」をするのではなく、「やりたいこと」をやる……一昔前にこのような考えを述べていたら「好きなことだけをして生きて行けるほど世の中甘くない」と一笑に付されてしまうところでしょうが、ウェブの進化により、その様相が大きく変わってきているのです。「ちょっと好き」という程度ではなく、「人生をうずめる」ほど没頭し「きわめて勤勉」といえるほどの熱意をもってすれば、「ありえない夢」が「簡単ではないけれど実現可能な夢(プロ野球選手になるよりは100倍簡単)」になっているようです。

 どうしてそのようなことが可能なのか?筆者はウェブの進化を「経済のゲーム」としてではなく「知と情報のゲーム」としてとらえています。
「経済のゲーム」の観点では、ウェブ2.0は思ったよりお金が回らないではないかという嘆息がこれから出てくるはずだ。「群衆の叡智」の周辺には大きなお金の匂いがしないではないかと。しかし逆に、そこが大きなお金とは切り離された空間だからこそ、悪があえて介入するだけのインセンティブが小さく、それにより善性が際立つ「知と情報のゲーム」の空間になっているともいえるのではないだろうか。
チープ革命、受益者非負担型インフラ、無償サービス、情報の共有……。ウェブ進化のキーワードをならべてみればまさに、「貨幣経済の外側で活動する能力」がパワーアップされて、広く誰にも開かれていく未来が見えてくる。お金をあまりかけずとも、「内面的報酬」を求めて、能動的で創造的な行為における「好き」を貫く自由が広がるのだ。
 そして、もうひとつの地球の住民に、新たなリーダーが生まれれば、現実社会とは異なる世界が広がってゆくと主張しています。
そういう営みを成功させるためには、まったく新しいリーダーシップが必要なことをこの10年は指し示しているのではなかろうか。自然状態のネットのパブリック空間は、善悪、清濁、可能性と危険といった社会的矛盾を含む混沌なのだが、その中核に「不特定多数を信頼する」心を持ち「人生をうずめる」ように「好き」な対象に没頭するリーダーが現れたときに、そのリーダーが作りだすコミュニティは公共性・利他性を帯び始めるのだ。
 このような、リアルの世界とは違う「もうひとつの地球」を生きるにはどうすればよいか、詳しく考察されていますが、なかでも心に残ったのが以下の内容です。
あらゆる面で徹底的にネットを活用すること。自分の志向性や専門性や人間関係を拠り所に「自分にしか生み出せない価値」(さまざまな要素からなる複合技)を定義して常に情報を発信していくこと(ブログが名刺になるくらいに。自分にとって大切ないくつかのキーワードの組み合わせで検索すると自分のエントリーが上位に並ぶようなイメージ)。自分の価値を理解して対価を支払ってくれる人が存在する状態を維持しようと心掛けること。
ネット空間から即座に反応が返ってくることに興奮したり、ミクシィで友だちをたくさん作りそこから生まれる新しい関係を積極的に面白がっている「働き者」タイプの人たちは、「そんなことなにが面白いの」と言っている「面倒くさがりや」タイプの「怠け者」よりも、あきらかに「けものみち」向きである。これまでの日本社会は「頭のいい人」対「悪い人」、「記憶力のいい人」対「悪い人」という軸で社会が動いてきた面が強いが、「けものみち」では「働き者」対「怠け者」が軸となる。「けものみち」で「頭がよければいいだろう」というのは通用しない。何かを知っている、何かを記憶しているというタイプの頭のよさは、あまり重要ではなくなるからだ。
 英語で「in the right place at the right time」という言葉がある。「正しいときに正しい場所にいる」。
(中略)
 新進の気性に富む、積極性、自己表現欲求、広い問題意識、高速道路の外の世界への関心、情報収集力、行動力、積極性、勇気、スピード感、常識、明るさ、素直さ、人に好かれる性格、コミュニティ・リーダーシップ、段取り力、コミュニケーション能力、気遣い、やさしさ、柔軟性、反射神経的に判断して物事を決める力。
「けものみち」の要素をこう列挙していけば、とてもこれらを兼ね備えるのは至難の業のようにも見えるが、人間としてごく常識的で、少し積極的に日常を丁寧に生きることに他ならない(あんがい、男性よりも女性のほうがごく自然に「けものみち」を歩いていけるのかもしれない)。そういう日常を大切に繰り返していけば、「正しいときに正しい場所にいる」幸運にめぐり合うチャンスも大きくなるし、「けものみち」に恐ろしい「けもの」は出てこないものだ。仮にちょっとした「けもの」が現れたって、仲間の誰かがすぐに助けに来てくれるだろう。
日本の若い人たちのブログを読んで思うのは、「人を褒める」のが下手だなということである。つまらないことで人の揚げ足を取ったり粗探しばかりしている人を見ると、よくそんな暇があるなと思う。もっと褒めろよ、心の中でいいなと思ったら口に出せよ、と思うことも多い。「人を褒める能力」とは「ある対象の良いところを探す能力」である。(中略)「ある対象の悪いところを探す能力」を持った大人が日本社会では幅を利かせすぎていて、知らず知らずのうちにその影響を受けた若い人たちの思考回路がネガティブになっているのだろうか。
 問題は、そういう思考を続けていると、自然に批判対象を自分に向け「自分の悪いところ」ばかりを探す能力が長けていき、ひいては自己評価が低くなり、何事につけ新しいことに踏み出す第一歩の勇気が出てこなくなることである。(中略)そんな悪循環を断ち切ってほしい。
「人を褒める」ために、歯の浮くような紋切り型のお世辞を言う必要はない。「なぜかわからないけれど、あなたの(この本の、この情報の)ここの部分は、自分ととても波長が合ったと思う」ということを表明するだけでいいのである。前向きに真摯に相手と向き合っていることさえ伝われば、それが褒めたことになる。(中略)そのプロセスをブログで記録することは、自然に「褒める思考法」を身につけることになる。自分の志向性を探索することは、膨大な雑音を払いのけて、自分と波長の合う信号をさがすことだ。けなす対象は自分にとっての雑音にすぎない。それに関わり批判したり粗探ししている時間はもったいない。
 その他、

・生きるために水を飲むような読書
・これからの知的生活には資産より時間
・ネットは知恵を預けると利子をつけて返す銀行
・群衆の叡智を味方につける勉強法

など気に入った表現はあげればきりがありません。

 要は、賛否あるネットの未来は、使う側の意識如何により、無限の可能性を提示するものになり得るということではないでしょうか。この本は、読めば読むほど前向きな考えになり、ワクワクする感動が得られると思います。
あとがき

(前略)
 ウェブは、「志」を持って能動的に対峙した時に、まったく異なる相貌を私達に見せるものである。「志」さえ持てば、ウェブは「人生のインフラ」として「個」を大いに助けてくれる。私はそのことを、できるだけ多くの人たちに伝えたいと思い、適切な言葉を探し続けた。
(中略)
 本書は、まじめで一生懸命な若者たちの、そして昔そういう若者だった大人たちの心の中に、未知の世界を楽しむエネルギーが生まれてほしいと思いながら書いた。
 未知を楽しむエネルギーが心に宿り、「志」を立て、「はじめの一歩」を踏み出す力が出さえすれば、私たちの前にはさまざまな可能性が次々と訪れる。一生懸命何かをやりたいと思う人たちを、これまでの日本社会は、レールの上を走らせよう走らせようとしてきたが、そうではない道もあるのだ。(中略)自由を享受するためには、自発的で能動的な「新しい強さ」を身にまとわなければならない。その強さが身につけば、世の中に対する見方は大きく変わってくる。
「時代の大きな変わり目」を生き抜く「新しい強さ」について考え続けた本書が、ひとりでも多くの読者の心にさざ波を立てることになれば、私にとっては望外の喜びである。







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My Life Between Silicon Valley and Japan ← 著者ブログ
茂木健一郎 クオリア日記
小粋空間
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しかし、難しい本読んでるね〜。
私は、目が痛いから、本はダメだね…。

ブログの更新で精一杯さ…。
【2007/12/24 18:55】URL | tommyちゃん #FhYyxA6I[ 編集]

■ tommyちゃん
コメントありがとちゃん

じゃあ、この本の内容を一言で要約すると、
「これからのウェブ世界では、tommyちゃんのような人が活躍する」
ということでしょうか。いや、お世辞じゃなくて、本当にそう思います。だって「働き者」だから。
【2007/12/24 19:30】URL | チャーリー432 #LbYl9WXI[ 編集]

チャーリーさんは、優しいね。
今、この優しさを持つ人が
少ない気がするよ。

みんな自分の事で精一杯。

お互い、楽しくお付き合いしましょう!
【2007/12/24 21:47】URL | tommy #FhYyxA6I[ 編集]

■ はじめまして
「あわせて読みたい」から辿り着きました。
あし@にも登録されてるんですね。
久しぶりに読み応えのあるブログに出会えました。

素晴らしい記事、ありがとうございます。
あし@のお気に入りにも登録させていただきました。
支障があればご遠慮なくおっしゃって下さい。
【2007/12/24 23:31】URL | RSB☆WAO #zHxwI7po[ 編集]

■ tommyちゃん
コメントありがとちゃん。

こちらこそよろしく!です(^o^)ノ
幸か不幸か、自分には「反面教師」と思える人がいて、「ああはなりたくない」という明確な像があるので、その反対を行くように心掛けています。

なかなか難しいことですが。
【2007/12/25 12:48】URL | チャーリー432 #LbYl9WXI[ 編集]

■ RSB☆WAO様
コメントありがとうございます。

そして、お気に入り登録もありがとうございます。こちらからも登録させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。(^o^)
【2007/12/25 12:49】URL | チャーリー432 #LbYl9WXI[ 編集]

それ…。

俺かい?…(^o^;)
【2007/12/25 21:45】URL | tommy #-[ 編集]

■ tommyちゃん
違いますよv-405

リアル世界の人間関係です。
(ここ、見てたらどうしようv-405
でも、最近思うのです。
如何に自分に不都合な相手でも、結構恩を受けていると言うことを。だから、お互いに向上できるような関係になれれば、と願っております。


tommちゃんは師匠です。
でも、「ちゃん」は消えても「tommyちゃん」
【2007/12/25 21:55】URL | チャーリー432 #LbYl9WXI[ 編集]















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